
トラ脱走事件と聞くと海外の動物園からトラが逃げ出したのかと思いますが、実は日本の千葉県でも過去にトラ脱走事件が起きていたのです。TBS系の「世界の超S級危険生物」で、この事件を特集するということで、今回は千葉県君津市の神野寺で起きたトラ脱走事件の真相やその後について調べてみました。
千葉県で起きたトラ脱走事件
1979年の夏に千葉県君津市の神野寺というお寺で飼っていたトラが逃げ出していることを飼育係が発見し警察に通報。
神野寺周辺の80世帯に住む約240人の住民に対して外出禁止令が出されるなど厳戒態勢がひかれ辺りは異様な雰囲気に包まれます。
今では、動物園など以外での猛獣の飼育はありえないことですが、当時はそういった規制もなく、神野寺には動物園が併設されていたそうです。
逃げ出したトラ3頭の行方は?
神野寺では、12頭のトラを飼っていましたが、そのうちの3頭が檻から逃げ出しました。
逃げ出したトラは子供のトラでしたが、それでもトラ。
体長がおよそ1.5mで、体重も100キロと子トラとはいえ人間が襲われたらおそらく助かる補償はないでしょう。
逃げ出した3頭のうち1頭はすぐに見つかりましたが、残りの2頭(1歳のメスとオス)はすぐには発見されず、周辺の住民はいつトラに出くわすか分からないという恐怖の日々を過ごすことになります。
1頭を山中の沢で発見
逃走中のトラ2頭のうちメスのトラは神野寺の近くの山の中の沢にいるところが発見されました。
トラの捜索に協力していた君津猟友会のメンバーの一人がすぐに発砲。
他のメンバーが駆けつけたときにはトラは沢に横たわっていたそうです。
逃走中の2頭のうち1頭を仕留めたことで、残りあと1頭と志気が上がるかと思われましたが、トラを射殺したというニュースを聞いた動物愛護団体などから非難が殺到。
逃走したトラを飼っていた神野寺からも生け捕りにして欲しいという要望が出るなど事件は思わぬ展開に・・・。
周辺に住む人達の安全確保のために、逃走中のトラを捜索しているのに、メストラを撃った君津猟友会のメンバーの自宅には苦情の電話がひっきりなしにかかってきたそうです。
飼い犬がトラに食べられる?
残りのオスのトラはまだ逃げたままですが、全国から寄せられる苦情を考えると生け捕りにするべきという意見も出てきて捜索方針が曖昧なままの残りの1頭の捜索が続けられましたが、逃走から1週間以上が経っても最後の1頭は見つからず千葉県警は、捜索を中断することになりました。
最後の1頭が見つからなかったことで、周辺住民はトラに怯えながら暮らしていましたが、捜索中断の発表があった日から2週間半後に飼い犬がトラに襲われるという事件が発生して事態は急展開を迎えます。
飼い犬が襲われるという目に見える被害が出たことで、いつ住民に被害が及ぶか分からないという意見が出て、再び捜索を開始。
トラの足跡を見つけた君津猟友会のメンバーが足跡を注意深く追跡していったところ、ついに神野寺から4キロ以上も離れた山の茂みでオスのトラが発見されました。
発見されたオスのトラはすぐに仕留められ、トラが脱走したという通報が最初に入ってから約1ヶ月後に、千葉県で起きたトラ脱走事件はやっと収束を迎えました。
神野寺の住職の責任は?
動物園を併設してトラを飼育していた神野寺の住職の責任が気になるところですが、事件が発生した当時、猛獣の飼育を禁止する法律や条例がなかったため、神野寺の住職が捕まったりすることはありませんでした。
ただ、神野寺は檻の鍵はかかっていたと主張していましたが、警察による事件後の現場検証で鍵はかかっていたいなかったと判断されたそうです。
トラ脱走事件のその後は?
檻の鍵がかかっていなかったことに対して神野寺や住職に対して処罰が下されることはなかったようですが、結局北海道の動物園などが神野寺で飼われていた残りのトラを引き取ることになったそうです。
この千葉県で起きたトラ脱走事件を受けて、猛獣の飼育には申請や許可が必要になるなどの条例が全国の自治体で制定されるなど、この事件を境に日本における猛獣の飼育が大きく変わることになりました。
また、射殺されたトラを偲んで、後に忌野清志郎さんによって追悼コンサートが開催されるなど、千葉県で起きたトラ脱走事件は全国的にも大きな関心を集める事件だったようです。